旅行する人にとって、山越えは難所。トンネルや飛行機が普及するまでは、いったりきたりしながら山道を登ることも珍しくありませんでした。でもそんな山越えだからこそ、途中の景色やてっぺんでのいっぷくが楽しいもの…。オーストラリアのシドニー近郊、アデレード(Adelaide)やパース(Perth)と結ぶ鉄道の大陸分水嶺区間では1869年(明治2年)から1910年(明治43年)のあいだ、ジグザグのスイッチバックを使って山を越えていました。今ではその区間の一部が「ジグザグ鉄道」(Zig Zag Railway)として、当時をしのぶ観光用鉄道になっています。2010年5月8日に行ってきました。
場所はここ。
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もよりは、シドニー・セントラル(Sydney Central)駅から近郊電車(CityRail)ブルーマウンテン線(Blue Mountains Line)で2時間40分、150kmほどのジグザク(Zig Zag)駅。先に紹介したカトゥーンバ(Katoomba)から40分ほど先に進んだところにあります。電車はほぼ2時間に1本。往復きっぷ(Return Ticket)は15.6豪ドル(2010年12月16日のレートで1297円)、土日休日に使える往復きっぷ(Off-Peak Return)だと10.8豪ドル(898円)。カトゥーンバに寄りながら行くなら、平日ならフリーきっぷ(20豪ドル、1663円)、土日休日ならジグザグまでの往復きっぷにカトゥーンバからジグザグまでのきっぷ(6豪ドル、499円)を組み合わせるとよさそうです。
なお、ジグザグ駅はホームの短い無人駅。乗り降りする人がいないときは通過することになっています。ジグザグで降りるときは、電車のいちばん後ろにいる車掌さんにあらかじめ申し出て、電車のいちばん後ろの車両の後ろのドアから降りることになります。英語に自信がなくてもだいじょうぶ。車掌さんに「プリーズ・ジグザグ、ジグザグ!」と連呼すればわかってもらえるでしょう。
さて、ジグザグで降りると、左手がジグザグ鉄道のボトム・ポイント(Bottom Point)駅。見取り図はこれ。
下の青い線が近郊電車の線路。左側がシドニー方向。緑の線がジグザグ鉄道。今はシドニー方面の電車は、ジグザグ駅を出てすぐトンネルに入りますが、1910年までは、緑の線に沿って折り返して峠に向かっていたわけです。
で、灰色の線に沿ってボトム・ポイント駅に向かいます。駅はこんなの。
ホームを通って駅舎で往復きっぷを購入。28豪ドル(2010年5月当時のレートで2165円)。待っているとほどなく列車が到着。
坂を下ってきたので、あまり煙は出ていませんね…。折り返しで乗車する列車になります。
なお、ジグザグ鉄道は日によって運転時刻と使用車両が違います。蒸気機関車が走るのは、土曜、日曜、水曜。それ以外は原則としてディーゼル機関車(2010年)。日曜は蒸気機関車とディーゼルカーが交互に走り本数も増える日で、ディーゼルカーもなかなか魅力的だったのですが、私が乗ったのは土曜で蒸気機関車だけの日。
ジグザグ鉄道のWebページはこちら。時刻表はこちら。
実はこれから向かうクラレンス(Clarence)駅は大きな道に面していて、車で乗り付けた人がクラレンスから往復するほうが、地元の人には一般的。なので、静かだった駅が折り返しのお客さんで一気ににぎやかに。
蒸気機関車には人だかりが。
蒸気機関車は給水を済ませると、列車の反対側へ移動。
間もなく発車なので車内へ。これが客車(蒸気機関車連結前)。
車内はこんなかんじ。
さて列車は出発するとすぐに坂を登り始めます。
10分ほどで列車は駅らしき場所に到着。
ここはトップ・ポイント(Top Points)という名の信号場。列車が逆方向に折り返すための設備で、人が乗り降りするところではありません。
でも機関車の付け替え時間を利用して外へ。ここは、ぜひ跨線橋の上から通過する蒸気機関車を眺めたいところ(トップの写真)。煙を浴びると10年長生きできるといいます(ウソ)。ちなみに橋の上からの景色はこんなかんじ。
10分ほどの停車のあと折り返した列車は、今来た線路と、電車が走る線路を見下ろしながら進みます。
この三段スイッチバックの風景は、1869年とさほど変わっていないのではないでしょうか…。
さらに10分ほどで終点のクラランス駅。
折り返し時間は40分ほど。このあと列車は、来た線路を逆に、ボトム・ポイント駅まで。ちなみにクラランス駅とボトム・ポイント駅の間は遊歩道があり、森の中を散策しながら歩けるようです。所要45分。そのための片道きっぷは18豪ドル。
さて帰りの電車ですが、ジグザグ駅は黙っていると電車が通過する駅。
そのためにホームに備え付けの緑の円板付きの棒をかざしてやって来る電車に合図する必要があります。フラグ・ストップ(Flag Stop)ですね。ぜひ電車を停めてみたかったのですが、スイスから来たという老夫婦にその役割を譲ってしまいました。ちょっぴり残念…。
私が訪れた当日は、ブライダル姿のカップルが私が降りたあとの列車にご乗車。貸し切りではなかったようなので今から考えるとちょっと不思議な気もするのですが、ともかく、紆余曲折しながらもいっしょに登っていくとはおしゃれです…。ご結婚おめでとう、末永くお幸せに(Happy Wedding! and have a happy life with your partner)。
というわけでジグザグ鉄道。シドニーを訪問した乗り物好きには欠かせないポイント。ブルーマウンテンといっしょに回ると楽しいと思います…。
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